デジタル写真講座2012


 (1)2012年もスマート?

  現在、写真の約3割はスマートフォンで撮影されているという衝撃的なニュースが
 昨年末、産経ニュースに出ていました。昨年初めから筆者が心配した通りの結果が早くも
 出てきてしまいました。これがデジタルのスピードなんでしょうね。昨年爆発的に普及した
 スマートフォンのパーセンテージは今もうなぎ登りで止めようがないのです。しかもその機器
 のほとんどは海外メーカー製(iPhoneを筆頭にGALAXYなど)で、日本製は影が薄いですね。
 特に利便性と多彩なアプリケーションを備えたiPhoneは大人気で、老若男女問わず操作する姿
 を見かけるようになりました。最近(昨年)、結婚式の撮影をする親族や友人関係者は3,4割が
 iPhoneを使用しているのではと思うぐらいの多さです。撮った画像をパソコン経由せず、簡単
 に修正や加工まで出来る優れ物なのですから、少々クオリティが低くても一般ユーザーにとっ
 ては、煩わしい転送やパソコン操作の回避を選んで当たり前なのです。この簡単な問題に
 気付いていながら何もせず、指をくわえて見ている多数ある日本のカメラメーカーは5年後、
 生き残れるのでしょうか?かなり疑問です。理由はこれ(スマートフォン)を超える操作性&
 利便性を兼ね備えた商品は今年中に出現しそうにないことと、スマートフォンの更なる進化
 が予想され、カメラはおろか携帯型ゲーム専用機、テレビに至るまでそのシェアを伸ばしつ
 つあるといってもいいのではないでしょうか。写真に関してもスマートフォンに簡単なレンズ
 交換&ズーム機能や画面操作による撮影モードの進化で、ほぼコンパクトカメラになって
 しまいます。今や写真家だって重い機器をたくさん持ってあちこち行きたくないんだし、
 コレで作品を撮って発表しても誰も何も言わない時代にもなっています。今年の3月までに
 カメラの2大メーカーであるキヤノンとニコンから前作からかなり進化させた新しいプロ用
 フラッグシップカメラが発売されますが、どちらも有線LAN接続が可能となってはいるものの、
 (当然でしょうけど)単独での通信機能は付いておりません。プロ用ですから、良い画像が撮れ
 ることが第一で、確保したデータをいかに安全迅速に所定の場所へ送れるかというのが第二の
 課題となります。要はもう少しコンピュータ化する必要があるということです。“良い画像”
 プラス何かが。
 例えば、カメラにミニキーボードを直結し画面操作ができるといいなぁ~と個人的には思って
 います。現在のプロシューマ機だろうがコンシューマ機だろうが、カメラ側からは操作が全く
 出来ないので、何とつないでもいいのですが、カメラ側から操作できるといいでしょうね。
 スマートフォンはそれができてしまうから便利なのです。
 今、プロアマ問わず写真の転送や管理に困る方が多いので、そこまで出来るカメラが登場し
 てもいい時期だとは思うんですけど現実はそうではありません。
 この状況が打破出来ないと純然たるカメラはなくなる一方でしょう。
 とにかく今年もスマートフォン強し!
 でしょうか。
 


 (2)デジカメで使いたいLEDライト

  2012年は多くのメーカーから新しいデジタルカメラやそれに関わる商品が発売され、
 久しぶりに活況を帯びているようで、写真に携わる者にとっては楽しくもあり苦痛でも
 あります。楽しいのは言うまでもありませんが、苦痛は新しい機器とソフトを導入する
 ことで発生する新環境に適応することが老若問わずたいへんであることです。
 特に新しい画像処理ソフトやモニタキャリブレーション機器は仕様を熟知し使いこなす
 のにかなりの時間と労力を要する為、古いものをそのまま使用しているケースが多々あ
 るようです。そういった使用方法の難しいデバイスとは対極にある誰でも簡単に使える
 アイテムを今回はご紹介します。カメラがデジタル化され、日進月歩で進化し続け
 携帯電話にも高性能なカメラが付いているので、誰もがお手軽簡単に撮影するようになり、
 ブログやSNSアップするのが当たり前の時代となりました。しかし、簡単にハイクオリティ
 な画像をアップするのは難しいものです。特に適正な露出とホワイトバランスを得ることが
 最難関のようなので、そんな難問に応えてくれるお手軽ライト、LEDライトの使用をオススメ
 いたします。フィルムカメラ時代は大光量が必要でしたが、高感度になったデジタルカメ
 ラには少しの光でも十分に役立つため、省エネで熱を持たないLEDライトはかなり注目され
 多くのメーカーから映像専用LEDライトが発売されています。その中で最注目のライトが
 イギリス製の“Rotolight RL48-B HD LED リングライト”です。
 イギリスBBC放送局でも取材時に使用しているらしく、その使い勝手の良さからいろんな
 撮影に応用できて、コレ一つあればブログやSNSの画像のクオリティアップ間違い無し!
 太鼓判押せる品ですね。筆者自身も使ってみて、あまりにいいので病みつき状態です。
 まず、大きさですが外形138㎜、厚さ25㎜で、重さは中の単三乾電池3本なしで170gと軽量です。
 
 そして何より明るくて白熱灯のように熱を発しないので、専用色温度変換フィルターを
 ライトに装着できて、フィルターそのものもライトの裏側に入れて持ち運べます。
 
 上の画像にある軽量ハンドグリップに付けて、レストラン内で携帯電話のカメラ機能
 を使用し、左手にライト、右手にカメラを持ち、ただシャッターを押すのみで、
 カレーを撮影してみました。
 
 更にタンドールチキンをライトありと自然光のみで撮影比較してみました。
 一定の光量が得られ、肉に任意でテカリも入れられてシズル感も出せました。
 
 上記はコンシューマ用超お手軽撮影法で、ただただ光を当てて撮るだけでも、
 かなりハイクオリティな画像が簡単に撮影できる一例です。
 次に応用編ですが、一つ目はコンパクトカメラを使用し、三脚やライトスタンドなど
 場所をとらない撮影法です。下の画像はカメラアクセサリーのブラケットを使用し
 専用アームで角度を自在に操作し撮影する方法です。
 
 上記作例は下の人形2体が写っている画像がそれですが、白のテーブル上で上と左右
 は黒壁の室内でストロボの反射を使えない時などに有効です。色温度が合わない時は
 ライトに色温度変換フィルターを入れれば窓抜けの色ともある程度合わせられます。
 
 二つ目は、上のアームを使って人物撮影です。
 高感度を使える一眼レフカメラで明るくて軽い安価な標準単体レンズを使用すれば、
 一般の方や(経費節減でカメラマンを連れて行けない等)カメラマンなしで撮影する
 編集者・ライターの方にはうってつけの撮影法です。電源を引く必要もないし、
 目つぶり赤目といった不安要素も全くありません。
 
 最後にロトライトを使って、ちょっとプロっぽい撮影を二つ。
 「一灯でも知恵を使えばキレイに撮影できる その1」
 被写体に向けて熱を発しないLEDの特性を生かし、至近距離からライトをあてて
 溶けやすく崩れやすいケーキを撮影。白熱灯では考えられない、ストロボでも
 難しい距離から自在にライトがあてられるので、ロトライトをスポット光のように
 扱えます。しかもセットを小さく組めるから台所で作ったケーキをその場で撮影!
 なんてこともできるから、料理研究家の方にオススメしたいですね。
 
 
 「一灯でも知恵を使えばキレイに撮影できる その2」
 1灯で2灯以上あるかのように撮影する方法ですが、難しいようでいたって簡単な
 撮影法で、スキャナライティングという方法です。カメラはバルブ設定し、シャッ
 ターを開いている間は任意の方向に光を動かし撮影します。こうすることで影を
 無くしたり、入れたい場所にハイライトを入れたりできます。本来2~3灯使う撮影
 が1灯で出来てしまうのです。
 
 
 上記のような多彩な撮影ができるLEDライトは、アイデアでいくらでも撮影法が
 作り出せる優れアイテムだと思います。女性のハンドバッグの中にも入れられて、
 スイーツ・アクセサリーなど小物撮影に最適かも☆★☆
 
 Rotolight(ロトライト)に関するお問い合わせは、イメージビジョン株式会社へ
 http://www.imagevision.jp/index.html
 
 


(3)モニタキャリブレーション2012

  パソコンのデバイスとして絶対に欠かすことのできないディスプレイ。これなしには
 パソコンの操作をすることはできません。そのデバイスの主役もCRTから液晶へと完全移行し、
 かなり時間が経過しました。重く大きくスペースを取るCRTとは正反対の構造を持ち、省エネ
 デバイスとしての側面も持つ液晶は発売当初、見る角度で明るさや色が変化し、映像用として
 使用するには未熟なデバイスでした。しかし、ナナオが発売したカラーマネージメントモニタ
 ColorEdgeを契機に、各社が熾烈な競争を展開し、その精度は年々良くなり、2012年現在どの
 メーカーのモニタを見ても、肉眼で見る限り全く問題ないようです。モニタ同様にプリンタも
 進化し続け、かつての銀塩プリントを超える写真が自宅で仕上げられるようになりました。
 そんな凄いモニタとプリンタがあれば、さぞや素晴らしいプリントができるのでは!
 と思うのが普通ですが、まだまだ難があるようです。問題はどのモニタにも言えることです
 が、まずカラーバランスが合っていないことが挙げられます。これは2005年にこの講座を開設
 したときから取り上げてきたことですが、未だに、どこもかしこも問題解決出来ていないのが
 現状ではないでしょうか。ずいぶん時間が経過しているのですが、モニタのカラーバランス
 調整は今も大きな課題のようです。この案件を書いている最中も写真家の方々に講義をした
 際、“新しいナナオの液晶モニタを昨年購入したが、このモニタで良いのでしょうか?”
 という質問がありました。まず大きな問題は、モニタキャリブレーションができていないこと
 が挙げられます。そのためモニタの正確なパフォーマンスがわからないのでしょう。
 そういうプロ写真家の方にお勧めしたいのが、今年バージョンアップされたデータカラー社
 のスパイダー4エリートです。これは、精度の高いキャリブレーションとモニタ評価がその場
 で出来て、そのモニタの実力が一目でわかる優れ物なので、シビアな仕事をされる方にはうっ
 てつけなのです。そこでいつも思うことなんですが、そんな難問を解決してくれる道具が
 ずいぶん以前から存在し、プロの写真家であれば十分認識していて、精度が向上し、かなり
 リーズナブルなお値段になっているにもかかわらず、なぜ使わないのか?ということです。
 そこで何度かこの講座でも取り上げてきたスパイダーの登場です。
 このシステムも今回で4バージョン目を数え、プロ写真家の方々にも名称が認知されている
 ようです。その新バージョンの最高機種スパイダー4エリートについては、精度が恐ろしい
 ほど向上しており、モニタの優劣が正確な数値で確認できてしまうのです。
 
 キャリブレーションの操作手順や画面は前回のスパイダー3と比べて、それほど変わりない
 んですが、環境光測定や目標値に設定した輝度の値が一定の許容範囲からずれると警告を
 発します。この警告に対する修正がやや面倒なのですが、この修正を正確に行うことで、
 そのモニタのパフォーマンスを知ることにも繋がるのです。
 
 下の①の画面はキャリブレータを使ってカラーバランスを整える前の状態です。輝度がやや
 低く、ブルーがやや高く目標値の5000ケルビンを100K超上回っていて、バランスが整ってい
 ません。
 ②の画面はモニタのカラーバランスを手動で調整し目標値の5000ケルビンと90cd/㎡に近付け
 てスパイダーの許容範囲内に収めます。この作業後は自動調整となります。
 
 
 
 
 キャリブレーションが終われば下の「キャリブレーションを表示」画面が現れ、
 キャリブレーション前後比較を切り替えボタンで出来るというのはバージョン3
 とほぼ同じで、大きく変わっのがこれ以降の画面です。画面右上の[SpyderTune]
 ボタンを押すと↓
 
 
 
 白色点・ガンマ・明るさをマニュアル調整できるスライダが出現します。
 “せっかく調整したものをなぜマニュアルで変えるのか?”と考えられる
 方も多いでしょうが、キャリブレーションは必要でも印刷データを作成す
 る作業をメインにしている方にとっては、使用する紙のテイストにできる
 限り近付けたいのです。プロ中のプロの要求に応えたメニューと言えるで
 しょうか。
 なので、印刷などを手掛ける超上級者以外は手を出してはいけません!
 それ以外の方は上の画面より先へは進まず、プロファイル(icc/icm)を作り
 作業終了です。
 
 
 プロファイルが出来上がれば、他のモニタや標準とのカラースペースが
 簡易的に比較できる「プロファイルの概要」画面が出てきます。
 下の画面ではsRGB標準と比べてブルーからマゼンタにかけてカバーでき
 ていないことが分かります。超上級者以外の方はこの概要を確認して
 完全終了。
 その上を目指す方(※所持しているモニタの分析をしたい方)は、右下にある
 詳細分析をクリック!
 
 
 
 「詳細分析」画面が表示され6つのメニューから、分析したいメニューをチェック!
 今回、筆者は以前から気になっていた「画面均一性」を分析することに。
 
 
 
 モニタを9分割しスパイダーで各所を測定し差異を表示してくれるので
 モニタの精度がどの程度なのか数値で認識できてしまいます(恐ろしや~)
 カラー&輝度の明るさ100~50%まで測定値を正確に表示し、見やすく表と
 イラストで示してくれて、最後に成績表(モニタ評価)をつけてくれます。
 印刷しておいておけば、色変換作業をする際に役立ち、次回数ヵ月後に
 再測定して数値確認し、モニタ買換えの判定基準にもなるでしょう。
 
 
 
 
 
 今回、分析したモニタCG-18はかなり古いものでかなり劣化もしており、
 すでに主力で使用はしていませんが、カラーの均一性能は高いと判定さ
 れたので処分は見送り、もう暫く使用することにしました。
 高価な業務用モニタであり精度もいいのですが、その精度を生かすためにも
 キャリブレータは絶必なのです。
 自分の持つモニタに不安を抱く写真メインの方、ぜひご自身のモニタを
 ご自身の手で調べてみてください。そうすれば色への恐怖心から解放さ
 れますよ~(^O^)/
 
 ☆最後にオマケですが、写真家の間でも人気のipadのキャリブレーションも
 このスパイダー3・4は可能となっています。今年3月に新型が発売され解像度
 が格段に向上したので筆者も購入しキャリブレーションしてみましたが、色域
 が狭いため、キャリブレーション前後の違いがほとんどわからないことを確認
 できました。スパイダーを持っていればソフトはタダでダウンロードできるの
 で一度お試しあれ。
 業務用モニタと比べてどれぐらいの精度があるかということが認識できますよ。
 よくよく考えれば、タブレット端末にカラーの正確性は不必要ですかね~。
 
 
 
 スパイダーに関するお問い合わせは、イメージビジョン株式会社へ
 http://www.imagevision.jp/index.html
 


(4)2012年もう一つのトレンド“iPad”

  今年はスマートフォン旋風が吹き荒れていますが、中でもApple iPhoneの
 快進撃は目を見張るものがあります。そのiPhoneスマートフォンをそのまま大
 きくしたようなタブレットPCのiPad。こちらも勢いが止まらないようで、街中で
 見かけるタブレットのほとんどがiPadのようで、タブレットPCに関しては、
 Appleの独り勝ちではないでしょうか。2年前に発売された際、筆者はこの
 デジタル写真講座で、現時点での日本の出版事情から想像して“iPadは使え
 ない!”、“iPadを買わない!!”と断言していましたが、折れる時がきたよう
 です。読みたいものが自由に読めるわけではないのと、欲しい機能と容量が
 いまいちではあるのですが、今回買うこととなりました。理由はiPadでホーム
 ページを見る人が多くなってきたので、どんなふうに見えているのかを確認す
 ることが第一の理由。次にお客さんに画像確認をしてもらう際、ノートパソコ
 ンでは起動に時間がかかるし、外では扱いにくいため、手軽に大きい画像を見
 せるビュワーとしての活用。最後にメールやSNSの確認のためだけにデスクトッ
 プPCを起動させるのは不経済!
 「たったこれだけの理由でiPadを買うんですか?」
 と人から尋ねられましたが、ホームページをせっせと書いている側としては
 死活問題なのです。
 というわけで、とにかく買ってしまったiPadが今回のテーマですが、Apple機器
 を暫く使用していない、もはや素人同然の筆者がいくらテストして書いても
 この超多機能端末iPadは扱いきれない気がしたので、今回は強力な助っ人を
 ご用意いたしました。というわけで、この『デジタル写真講座』始まって以来、
 初の無理無理インタビューを敢行!
 今回インタビューさせていただいたのは、IT関連の記事や著書を多数書いておられ
 特にApple関連は現在も雑誌・ムックで多数の記事を担当されているAeroVision代表
 フリーランスライター池田冬彦氏だ。インタビューをお願いした理由は二つあり、
 一つはAppleの歴史&新旧製品の取り扱いを熟知し、雑誌の海外取材などでは
 フォトグラファーとしての経験も豊富だからでした。下記はインタビュー内容です。
 
 ーまずiPadとは、そもそもどういう位置づけの何をするための機器なんでしょうか?
 
 池田氏ーまずiPadが発売される以前の2007年にiPadの原形ともいえるiPod touchと
    いうiPhoneと同じ外観の携帯情報端末が発売されました。しかし、これは何をす
    る機器なのかユーザーには理解されず、ヒットしませんでした。それから2年半
    後に発売されたのがiPadです。iPhone、iPod touchと同様のマルチタッチ操作
    できるB5サイズの大きな板は、何に使う機器なのか?本を読むための端末
    なのか?等々当初、業界関係者からはiPod touchの再来なんだろうか?
    と敬遠されていましたが、そのようなものではありません。
    ノートPCとも違う。
    ノートPCというのは、仕事をするための事務用機器のような存在で、エクセルや
    ワードといった仕事用のソフトを動かすものとでも言えばいいでしょうか。
    iPadは、iPhone、iPod touchをただ単に大きくしただけのものではありません。
    iPhone、iPod touchとは似て非なるもの。
    iPadというこの“板”は、エンタメや情報を簡単に受け渡しできて、誰もが
    いつでもどこでも手軽に楽しめる“パーソナルインフォメーションツール”と
    いう位置づけでしょうか。
    演劇で例えるなら、iPadは舞台、アプリは役者ですね。
    iPhoneでも映画やTVは見れますが、小さすぎて見ていて疲れます。でも解像度も高
    くて、そこそこ大きな舞台であるiPadなら見やすい。そして舞台役者であるアプリ
    (情報関連アプリも含)の数が増えれば増えるほど汎用性が広がり楽しくなります。
    汎用性が広がればノマドワーキング(※1)にだって十分使えるでしょう。
    モバイルという言葉が数年前すでに死語となっていますが、iPadの出現は
    パソコンも もう終わったという終焉宣言でもありますね。
    今日だってお互いiPadで情報を交換しながら仕事の打合せを喫茶店でやって
    るじゃないですか。
 
 ー読みたい本がまだまだ読めない状況については?
 
 池田氏ー本の前に音楽について説明をさせてください。
    現在、音楽はiTunesが世界的に成功を収めましたよね。いろんな事業者が
    絡み、誰も手がつけられなかったものをスティーブ・ジョブズが一つにまとめ上げ
    音楽配信サービスにこぎつけました。本に関しても同様にスティーブ・ジョブズ
    がまとめてくれるのではという期待もあったのですが、音楽業界以上に保守的な
    出版業界はなかなかまとまらず、電子書籍のフォーマットも独自形式が多すぎて
    ばらばらなんです。これからいかにまとめていくかということと、この秋に日本に
    上陸してくるアマゾンのキンドルとAppleのiPadの一騎打ちでどうなるかにかかって
    いるでしょう。
    
 ーマルチタッチの技術は他にもありますが、なぜAndroidではなくiPadを選ぶ?

    
 池田氏ーマルチタッチ技術はすでにあったものですが、Appleがこだわったのは他では
    真似のできない技術を作ることでした。本や写真のデータをドラッグする際、
    手で動かしているかのような感覚に陥ります。指の微妙な動きを感知する繊細さは
    Appleだけの技術。Appleはすでに他社でこれらの独自技術を真似されないよう
    特許申請してあります。スマートフォンも同じことで、操作性はiPhoneだけが
    飛びぬけています。
    
 ー写真に大きく関係することですが、解像度が向上したことで今まで72dpiで
 作った画像がぼけて見えるんですが?


 
 池田氏ーこの問題は各所で話題になっていました。今回の新型iPadで採用されたレティナ
    ディスプレイは解像度が高く、2,048 × 1,536ピクセル、解像度264 ppiとなっています。
    従来の液晶モニタなら72dpiで十分でしたが、レティナディスプレイにそのまま映し出す
    とボケて見えます。そこで壁紙を例にいろいろと試した結果、2,048 × 1,536ピクセル、
    解像度300dpiに設定するのが、最も美しいのではと。
 
 ープロフォトグラファーにとってiPadはどのようなメリットが?
 
 池田氏ー1.撮影現場では
      お客様にも見せやすいし、美しい高解像度の画像がその場で簡単に確認できるの
      で、合理的に仕事を進められるでしょう。しかもノートパソコンとは違い手渡しで。
      撮影もiPad Camera Connection Kitで撮影後転送するのではなく、Eye-Fi Mobile X2
      カードのダイレクトモードでシャッターを切るごとに転送すれば手間が省けますよ。
     2.プレゼンテーションでは
      パソコン(デスクトップ&ノートパソコン)ではやり辛い。対面したまま紙のノートを
      扱うかのようにきれいな画像を手で自由に捲れて相手にも見せやすく、写真のプレゼ
      ンテーションにも向いているでしょう。
     3.ストレージとして
        一般的にはいちばん容量の少ない16GBモデルが売れていますが、写真家の方には
      大容量の64GBモデルをお勧めします。理由は画像ファイルのサイズが大きくなり
      続けていることが挙げられます。撮影しながらデータをため込めば、すぐに10、20
      GBになってしまう。データの確認とストレージをするのであれば64GBモデルです。
      データの確認をしながらストレージができるというのはプロフォトグラファーに
      とってかなりのメリットがあるのではないでしょうか。
      そしてパソコンとの連携を考えるとデスクトップパソコンはMACがいいですよ(^^)
      写真家の方々にオススメしたいAir Media Serverを使うためにもMACで連携する
      ことが理想ですね。
 
 ーiPadの将来は?
 
 池田氏ーアプリにより可能性が広がる機器だと思います。 
    まだまだこれから可能性のあるものが出てくるでしょう。
    コンシューマにとってもプロにとっても良いものが出てくると思いますよ。
 
 
 《インタビュー後、愛用のiPadを片手に筆者がiPadで撮影》
 
 という池田氏のインタビューからいくつかを抜粋させていただき掲載しましたが、
 筆者の方でもアドバイスいただいたことを交えながらいろいろとテストをしてiPad
 の可能性について考えてみました。まずは↓
 
 【Eye-Fi Mobile X2のSDカードを使用してのダイレクト転送】
 
 見せるだけのJPEG_S画像ならPC&通信環境にもよりますが、5~10秒くらいで転送
 してくれました。線でつなぐ手間もなく便利ですが、カメラによって、うまくつな
 がらないケースがありました。また、繋がっても転送が不安定な場合もありました。
 そして一番気になったのは設定を別のパソコンに依存しなければならないこと!
 簡単操作とは言えませんね。
 
 【iPad Camera Connection Kitを使っての画像転送】
 
 カメラとiPadをUSBで直接つなぐ方法とSDカードをカメラから抜き出しカードリーダー
 にさして転送する方法。それほど面倒な作業ではないので、操作性&安定性を求めるので
 あれば画像転送にはこちらをオススメします。ただし16GBモデルでは不安なので、池田氏が
 へのインタビューでもあったように64GBモデルをオススメしますね。
 
 【ホームページの閲覧】
 
 自身のホームページを中心に閲覧をしてみましたが、素のままではもちろんフラッシュ
 を見ることはできません。しかし、フォトショップで作成したgif 映像が入ったページ
 (WindowsXPでは見れません!)は難なく再生。表示等もブロードバンド環境が整っていれば、
 サクサク動作してくれて、PC環境と変わりありませんでした。
 池田氏推薦の別ウェブブラウザSkyfireを使用してフラッシュを一部閲覧できることも確認。
 
 【Photoshop Touchで補正】
 
 色情報などが出るわけではないのでほんとに簡易的なんですが、Photoshop Touch
 で画像補正ができるようになりました。仕事というよりはお遊びの楽しい合成&修正
 に使うものですね。たとえば、中に入れた音楽やラジコを聴きながら作業ができるの
 のがうれしいですね。出来上がった画像はPhotoshop Touchから直接ウェブサイトや
 SNSにアップもできます。
 (注1) ただしソフトは英語版のみです。
 (注2) 下の画像は、左が補正前、右が補正後です。
 業務用モニタではかなりの補正がかけられていることを目でハッキリ確認
 できるのですが、色域の狭いiPadでは差がよくわからないので過度の補正
 はやめましょう。
 
 
 【iPadに搭載されているカメラで撮影】
 
 筆者自身、これが最も興味あるアイテム!
 5メガピクセルiSightカメラで撮影した画像です。一眼レフデジタルカメラなど高
 画質の画像と比べれば細部の描写はまだまだといった感じですが、極端な拡大をし
 なければ印刷にも十分耐えるものにはなっていますね。ちょい驚き。
 さらにHD動画の撮影。欠点は大きな板なので手でかまえて撮影するのが難しいこと
 です。しかしこれも三脚とアダプタを使えばクリアできるでしょう。何よりもPCを
 外に持ち出し、PCが直接カメラとなり、その場で画像確認と編集まで出来てしまう
 というのが凄すぎる!さらにはその動画を友人たちとその場で楽しめてしまう!!
 “単体のカメラなど一切必要ないじゃないかー!!!”
 筆者がこのデジタル写真講座で訴え続けたこと(カメラに通信とPCの簡易機能搭載)
 をAppleがやってしまいました。これが最も脅威なんです!!
 
 【アプリ】
 
 充実のアプリケーション!
 これが池田氏の言うこののカギなのだが、氏が推薦してくれたアプリを
 インストールして試してみた。使う人の職業や趣味によってソフトの評価は
 様々だと思うが、App Storeから簡単にインストール出来て、不要になれば
 ボタン一つでアンインストールできてしまう。本当に簡単で誰にでも出来る。
 PCのような面倒作業がいっさいなくストレスフリーなのだ。好きなソフトを
 通信さえあれば好きに出来る。自分に合った使い方ができるPCを超越した機器
 なのでは?と思わされるぐらいの機器だと感じました。これならPC嫌いの方た
 ちにも勧められます。とにかく難しくないのです。
 
 まるで何も知らない赤ん坊が触れて動くものを見て、同じ動作を繰り返し学習し
 覚えて使いこなすかのように、、、とでも言えばいいでしょうか。
 例えば、筆者が今回このiPadで何を一番楽しんでいるかというとYouTubeなので
 す。YouTubeのアイコンに触れて若き80年代に見て聴いて影響を受けたミュージック
 ビデオをお気に入りに入れて、仕事の合間に見ているんです。とにかくこれが楽しい(^0^)
 見たいビデオが簡単に探せて簡単に見れる。PCではあまり見たいと思わなかった
 YouTubeにiPadではまっています。
 仕事では取材先へ行く際、マップを使っています。おかげで紙の地図が要らなくなりました。
 もしかして、氏がインタビューで答えてくれたiPadという機器の良さとは、コレなのでは。
 そして仕事もこなしてくれる。
 まだまだ膨大で細かな作業にはPCが必要だし、iPad単体ではどうしようもないのですが
 出先では急なプレゼンにも対応できるので、コレ1台でなんでもできますね。
 
 とにかく楽しく進化する魔法の板
 
 あとは読みたい新聞や本が有料で良いから気軽に読めると良いですよね。
 
 ※1 ノマドワーキングとはオフィスを持たずフリーランスで自宅や外で仕事をする人や、
   会社などの組織に属し一部の仕事を外でやる人を指します。


(5)ニューEOS Kiss X6iが凄い!

  今年6月に発売されたばかりのコンシューマに人気の一眼レフカメラシリーズ イオス
 キッスの“Canon EOS Kiss X6i”をテストしてみました。このシリーズは毎回驚くほどの
 進化を遂げて世に出てくるため、職業カメラマンの立場からみても発売されるたびに
 ワクワクさせられます。
 
 (※正直言って、プロ用カメラより機能も仕上がりもいいのではと思っているぐらいです。)
 外観や使用感、画素数などをみる限り、前回のX5とそう変りないのでは思ってしまうの
 ですが、撮影しデータをみると驚かされます。
 まずは常用感度が最高6400→12800にアップ、連写は3.7コマ/秒→5コマ/秒、高感度撮影
 時のノイズ低減も飛躍的に良くなっています。いったい何が変わったのか?
 このページではあまり小難しいことは書きたくないので簡単に!
 心臓部ともいえる画像情報を変換するための映像エンジンがワンランクアップ(DIGIC4→5)
 このおかげで、X5をはるかに凌ぐ画像を作ることに成功したようです。X4から高感度撮影
 時の画質は向上していますが、今回はさらに上をいっているのが目で確認できました。
 まずは夕暮れ時のスチルテストです↓
 
 
 
 日が長く明るい夏とはいえ、19:40以降の撮影でISO1600にセットしていますが、以前の
 バージョンで言えばISO400で撮影しているのでは?と思わされるほどの上がりで、
 100%拡大し、高精細度モニタで確認しないとノイズは見えませんね。
 昼夜の厳しい条件下のテストでも、直射日光による白とびや夜の高感度撮影時のノイズ
 が低減されていて、思った感じの色とコントラストを保っていて、質の高い画像が得ら
 れています。(プロ用機と比べて何が違うの?といいたくなるぐらいです。)
 
 
 
 これらで他に何が変わるかというと、やや明るめの室内で、(フリッカー現象は別として)
 ISO1600にセットし、ノイズをそれほど気にせず撮影出来るので、プロのサブカメラ
 としても十分使えるし、コンシューマにとっても手ブレを防げるぐらいのシャッタース
 ピードが容易に得られるので、たぶんX5よりクオリティが向上する?ことでしょう。
 
 そして今回のお楽しみツール&機能についてですが、液晶画面にタッチセンサーを搭載
 しているので、カメラ設定やピント合わせをダイヤル&ボタン操作なしで行えること。
 プロには必要ないようにも思われますが、使い慣れれば意外と便利に感じて、筆者はタッ
 チ操作を自然と使っているケースが多々ありました。
 
 お楽しみの二つ目はクリエイティブフィルター!
 これがかなりのスグレ物で、コンパクトカメラや携帯電話カメラ機能には付いていて
 一眼レフカメラにも付けていいのでは思っていた機能です。それが今回Kissに付いたので
 早速試してみました↓
 ①撮影をした元(フィルター処理前)の画像です。
 
 ②ジオラマ風(レンズチルト)
 
 ③トイカメラ風(色調を極端に悪くして、四隅をレンズケラレたように調整)
 
 ④水彩風(写真とは大きくかけ離れますが、自作カレンダーなんかに使えそうです)
 
 このような機能がパソコンを介さず、カメラ内部の簡単操作でできるのが手間が省けて
 いいですね。
 と、ここまではスチル(写真)についてですが、今回のバージョンで飛躍的な進化を
 したのは写真よりも動画かもしれません。
 今までは動画機能が付いていても使いにくいためほとんどの方が使っていなかったの
 ではないでしょうか?理由は動画サーボAFがないため動く被写体にピントを合わせら
 れないという一眼レフ独特の弱点が大きく響いたようです。しかし今回よりその機能
 を搭載し、ステレオマイクも付き、ムービー編集機能もあり、ビデオカメラに一歩近づ
 いた印象を受けました。
 この動画機能テストでは、特に動画サーボAFのパフォーマンスを把握することでしたが
 無いよりは良い 程度でしょうか?
 
 コンシューマにとっては一眼レフ動画のハードルが少し低くなったような気がしました。
 ではプロにとってはどうか?
 こちらの方がメリットあるようで、小型軽量であるため、スタビライザでのバランスが
 とりやすく、意外な場所(ブライダルや講演、店内などなど)で移動しながら、手ブレを
 おさえた撮影が出来るのではと。マイク機能も強化されているわけですから、動画に関
 しては重い5Dや7Dを使うより扱いやすいかもしれません。
 
 一眼レフカメラはもともと左右のバランスがとりにくいのですが、他のマグネシウム製
 カメラに比べてKissは極端に軽いので、スタビライザ上でのバランス確保は簡単!
 
 タッチ式のバリアングル液晶なので、ローアングル・ハイアングルにした際、画面
 確認と設定がビデオカメラ並みの使用感です。
 


(6)今年発売の新型一眼レフEOS-1DX・5DMⅢについて

  2012年はカメラメーカー各社から新型カメラが多数、新発売され今年2月の
 CP+は大入り大盛況でした。筆者も今年は買換えするべく展示会やセミナーに
 多数顔を出しました。
 中でも注目はNikonD800&E、そしてCanon EOS-5DMⅢ(以後5DMⅢ)。
 このコンシューマ機とプロシューマ機の中間のような2機種が気になり、今まで
 見向きもしなかったこのクラスの2つのカメラのメーカーセミナーに出席。
 両方とも完成度の高いカメラであることはこの時点で理解できました。
 そして今回のお題である5DMⅢですが、単純な画素数アップに重きをおかず、
 基本性能の向上と高感度での高画質実現を目指したようです。特に常用感度
 範囲を6400から25600まで上げてきたのは驚きです。基本性能はフラッグシップ機
 EOS-1DXと同等(AIサーボAFなど)のものもあったり、カードスロットもCFとSDが
 一つずつ付いて振り分け書き込み可能となりました。そしてプロの写真家であれば
 とてもとても気にする連写性能も5DMⅡの秒間約3.9コマから約6コマにアップ!
 (※秒間6コマでもまだまだ不満ですが、、)
 5DMⅡまでは基本性能が仕事上ネックとなっていた筆者も、今回の5DMⅢなら仕事
 でもなんとか使えるのではという感触が得られました。そして、5DMⅡから付加された
 動画機能はさらに進化を遂げて、「一応動画がとれますよ」という域を超えて
 編集作業を意識したALL-I、ヘッドホン端子(1DXには付いていない)まで付けて
 スチル以上に力が入っているように感じました。
 そんな5DMⅢを使って、撮りにくい被写体でテスト↓
 
 夏の夕暮れ時、19:00の風景ですが、反射率の高いビルが右側にあり、辺りは薄暗く
 撮影するにはやや困難なシチュエーションです。ISO1600 f2.8 1/100sec で撮影。
 
 ↑さらに暗くなって19:15 ISO4000 f4.5 1/20sec で撮影。
 
 ↑19:24 ISO4000 f5.0 1/6sec で撮影。夜景は35㎜F1.4レンズ使用。
 
 ↑薄暗いテーブル上のアーモンドを自然光のみ ISO2000 f2.2 1/125sec で撮影。
 レンズは50㎜F1.4を使用。
 
 動画も同じ風景をISO1600で撮影↓
 
 高感度で高画質という うたい文句も今回はまんざら嘘ではないようです。
 コンパクトで完成度が高く、プロの現場でも耐えうるカメラとして合格点
 でしょうか。
 とまあ、良いことずくめのようですが、一つ不具合を発見!
 メニューに標準搭載されているEye-Fi機能を使うとエラー80を連発することが判明。
 あまりにエラーが出るため、プロサービス課に相談したところ、どうやらEye-Fiカード
 が悪さをするようで、筆者は現在この機能は使用していません。撮り直しのきかない
 大事な撮影をしている時に起こっては大変!!撮りながら無線でパソコンへ転送できる
 という機能はとても便利なのですが、、、、
 標準搭載されていて使えないとなるとクレーム対象になるのではとも考えます。
 
 それから発表から発売が遅れに遅れたEOS-1DXについてですが、ロンドン大会終了後
 でも入手困難のようで、筆者自身もテストが遅れてしまいました。今回は5DMⅢの後に
 発売となりスペックそのものも特筆するものがなく、いまいちの感があります。
 5DMⅢがかなり進化し、12月発売予定の4K動画撮影可能なEOS-1D Cなどが控えている
 ため、存在感が薄れているようです。しかし、シビアな環境で撮影を迫られるプロの
 現場では信頼性と耐久性の高いカメラは絶必であり、そんな環境で仕事をする写真家
 の方々の意見を吸い上げ出来上がったプロ専用機はそれなりの良さがあります。
 5DMⅢとくらべて何が最も違うか?
 映像エンジンDIGIC 5+がシングルではなくデュアル搭載されているため、
 最高約12コマ/秒(超高速連続撮影モード時、最高約14コマ/秒)の連続撮影
 が可能。これでスポーツやモデル撮影の際、よく使う連写でビジー状態に
 なることは5DMⅢより少なくなります。撮りまくりたい場面でストレスなく
 シャッターが押せるというのが一番大切かもしれません。
 これはそういう現場で仕事したプロでないと理解不能でしょうね。
   
 そして以前の1D系で指摘されていたファインダー中央以外でのオートフォーカス
 精度も飛躍的に向上しており、安心してピント合わせをカメラ任せに出来ます。
 仕上がりも今まで気になっていた白の階調が豊かになり、白いシャツなど白とび
 し易いもので、かなりいい加減なライティングで撮影してもディティールは出ています。
 “さすがキヤノン!凄いね↓”
 
 また逆に、黒や夜景など暗いシーンも5DMⅢと同様に素晴らしい上がりです。
 ただし、ISO6000ぐらいまでが良好で、10000を超える高感度撮影ではノイズ等が
 目立って出てくるので、ソフトウェアでのノイズ軽減処理が必要となってきます。
 ある意味、ISO10000で撮影し、ソフトウェアで適正処理すれば、十分仕事でも使用
 可能ということでしょうか。
 
 ISO12800で撮影し、フォトショップorライトルーム現像時にノイズ軽減を施し↓
 
 スタジオ内でのモデル撮影の連写性能や、画像の上がり具合、カメラとしての
 パフォーマンスはケチのつけようはないですね。
 幾つかの問題が気にならなければ、プロの方にはオススメのカメラと言えます。
 いくつかの問題、それはまず大きさと重量。次は使用メディアとデータ転送方法。
 大きさ・重量については、スタジオでは問題にならないでしょうが、外での撮影
 、ムービーカメラとしての使用を考えるともう少し小さくていいのではと考えます。
 例えばバッテリー部分についてはオプションでもいいのではないでしょうか。
 これを外すことで飛躍的に小さく軽くできるはずです。
 欲しい方は後付けでいいと思うのですが。。。
 そしてメディアについては、デュアルスロットの両方がCFカード対応になってしまい
 これが一番の問題と筆者は考えます。今までは一方がSDカードだったため、パソコン
 へのデータ転送の際、カードの抜き差しが安心して行えましたが、CFカードの場合は
 カードリーダを壊すケースが多々あり、外での抜き差しはおすすめできません。
 そんな危険極まりないマイナートラブルを抱えるカードが2枚ささっているというのは
 プロとしては精神衛生上よろしくありません。カメラからの直接転送方法で有線LANを
 使用してFTPサーバへデータを送れるのですが、カメラ側の機能に制限がありすぎ使い辛く
 USBは2.0のままで遅い!この記録&転送という大切な部分は、写真家の意見を反映させて
 いるようですが、進化というよりは後退した感があり、評価したくない部分ですね。
 と、まあ改善してほしい点はいくつかありますが、使い方次第(メディアの抜き差し
 はしない!)では安定感があり設定も分かりやすくし易く、使いやすいプロ御用達
 カメラで100点中70点のカメラっていう感じですね。
 
 ☝この大きさが場所&場面によっては足かせとなるのです。
 ただ、1DXはバッテリーのもちが良いので、フル充電していれば、スチル撮影だけなら
 撮り方や設定にもよりますが3000ショットは安心してシャッターきれますね。
 5DMⅢは標準バッテリーだと常に予備バッテリー1~2個は必要です!!!
 
 ついでではありますが、昼の風景と高感度ムービーテストをアップいたします。
 
 ISO400 F9 1/320sec 偏光フィルター使用し、反射を防いでの撮影
 
 ISO12800で夜間撮影テスト


(7)GPS機能について

  ここ数年、内臓・別売りでGPS(グローバル・ポジショニング・システム)がカメラにも
 つきだしました。今年12月発売予定のキヤノンEOS6Dは一眼レフデジカメとしては初めて
 GPSが内蔵されるようになり、動画の次はWi-FiやGPS、フィルタ機能といった付加価値
 で各社勝負するようです。この調子ですと来年発売される機種はGPSを搭載したものが数多く
 出るのではないでしょうか。理由はコンパクトデジカメはスマートフォンという競合がいるし
 一眼レフデジカメはミラーレス一眼(国内よりも海外の)という強敵がいるからでしょう。
 この機能が良い悪いは別にして、今後発売されるカメラに随時付いてくる可能性が高いので
 その用途と性能について検証してみました。
 今回は新型一眼レフデジカメに搭載可能なキヤノンのGP-E2を使って、条件の異なる3つの
 ケースでその性能を軽く探ってみました。
 
 
 ①まずは平地で空がぬけている好条件を徒歩で測定(キヤノンMap Utilityで確認)
 
 電波を阻む障害物がなく広い場所では問題なく位置情報と撮影方向を示してくれました。
 電子コンパスでGPSが向く方向も正確に示してくれてます。
 
 しかし、その場所を離れてビルの谷間やビルの階段に入ると衛星をうまく捕捉出来なく
 なり、上の地図グリーンのライン内はかなりでたらめな位置情報となっています。
 
 ②車を使って移動し、高低差のある場所での位置情報確認
 
 高速道路を車で移動中もGPSはスイッチを入れたまま15秒ごとにログをとり
 位置情報が正確かどうかと、さらに1000メートル以上の高地へ移動し高度測定
 してみましたが、位置情報は問題ないことが確認できました。
 しかし、GPSにとって最大の弱点である高度測定はかなり誤差がありました。
 (↓Lightroom 4のマップ機能で確認)
 
 
 ③地下鉄で都内を移動し浅草駅近くの隅田川沿いの公園からスカイツリー撮影
 (↓Lightroom 4のマップ機能で確認)
 
 地下鉄内や建物内では衛星捕捉は不可能でしたが、一歩外へ出れば問題なく位置情報
 は得られました。
 
 公園内は障害物(木や遊具、モニュメントなど)が多く存在しましたがこちらも
 問題なく衛星を随時捕捉し正確な位置情報が確認できました。。
 
 上のマップはLightroom 4のマップ機能なので電子コンパスは表示されていません
 が、キヤノンMap Utility上では確認できました。
 
 以上のような結果となりました。
 別売り2万円そこそこのユニットですが、位置情報を知る必要のある方には
 オススメできるのではないでしょうか。
 筆者自身は以前ガイドブックの仕事を多数こなしていた頃、GPS機能が欲しいと
 思いましたが、デジタルカメラもパソコンも現在のように流通していない時代
 だったので、その頃は夢のまた夢でした。写真の整理や原稿を書く際に正確な
 位置情報というのは必要なケースが多々あるはずなので、安価で精度の高い
 GPS機能はあるに越したことはないでしょうか。ただし、人に知らせたくない
 秘密の撮影場所やアングルもあるでしょうから、自身の確認が済めばexifデータ
 の削除も必要でしょう。
 


(8)Apple新製品iPad miniとiPhone5について

  今年3月に発売されて衝撃を与えた新型iPad。
 タブレット端末市場の話題を独占快走中でしたが、1年たたず次なる一手、iPad miniが
 11月2日に発売されました。こんなに早く新製品が投入されたことに筆者自身も驚きま
 した。しかもスペックを見る限りかなりのもののようなので、ここはもう一度、Macの
 エキスパート池田冬彦氏(※以後敬称略)にお話をうかがうべく前回より無茶な
 iPad mini発売日にインタビューを決行いたしました。
 
 ー今回のiPad miniが発売された理由はなんでしょうか?
 
【池田】iPadはキーボードのないタブレットコンピュータというジャンルを牽引した革新
 的な商品ですが、例えば、電子書籍端末として使うには大きく重すぎました。
 その反省をして今回のiPad miniは出てきました。特徴としては、従来のiPadと同機能
 で解像度も同じ。簡単なようでそうではない。かなり緻密な計算の上に成
 り立っているのです。サイズの7インチではなく7.9インチがそれで、リソースを変更せ
 ずにできるギリギリのサイズなんですよ。これは自前のiOSというOSが有るからという
 のもあります。ハードウェアとOSを自前で持っているのはAppleだけです。Appleだから
 こそできるんでしょうね。重量もかなり軽くし、前のと比べて“手帳寄り”といった感
 じでしょうか。これなら持ち運びも楽ですし、電子書籍端末としても最適といえるので
 はないでしょうか。
 
 ー確かにAppleにしかできないことで、今回のサイズダウンで写真も撮りやすくなりましたよねぇ。
 (ということで二人して外の同じ風景を撮影し比較)
 
 
 
 
【池田】そして、iCloudのフォトストリームについてですが、iPadやiPad mini、iPhone、
 Mac、Windows、どのデバイスでもクラウドを介して同じデータが利用できるのです。
 iCloudの無料での制限5GBとは写真についてではありません。画像形式に関係なく1000枚
 という数が上限で1カ月以内なんですよ。それを超えると、古いものから消去されるのです。
 Appleはプロダクトだけでなく、クラウドというエコシステムも完成させました。
 
 ーとにかく今回のiPad miniのほうが携帯も楽で扱いやすく汎用性があることは確実
 なようで、具体的には撮影がし易い・カーナビ(従来のiPadも使えるが大きすぎて狭い車内
 では邪魔になる)としても使い勝手がいい、とにかく今までは片手で持ちにくかったものが
 同じ機能で持ちやすくなるというのはかなりの進化である。上のiPad Retinaディスプレイ
 モデルと比較しても画面表示が劣ってはいない。miniはRetinaディスプレイではないが、
 この小さな画面にiPad2と同じ1024×768の解像度を持っているので、細かい字でも潰れる
 ことなく表示している。写真も同じで、Retinaディスプレイを見慣れている筆者が見比べて
 みてほとんど気にならない。そしてその写真を撮るための背面のカメラ機能も500万画素で
 測光方式なども進化し、仕上がりもコンパクトデジカメに近づきつつあるといっても良いぐら
 いでは? 取材中、これなら旅行中のブログと撮影にはぴったりではないかと密かに思った。
 正直言って、見た途端、「欲しい!」と。
 
 次に、もう一つの話題商品iPhone5についてもうかがってみた。
 
 ー先日発売されたiPhone5も凄いですね。かなり売れているようですが、いったい何が
 他社と違うのでしょうか?そして気になるカメラ機能とパノラマ撮影についてはどうですか?

 
【池田】今回のiPhone5は、歴代最高の出来と言っていいんじゃないでしょうか。
 少し突っ込んだ言い方をすれば、メーカーとしての凄さを見せつけた商品ですね。
 Appleは今まで、誰もが想像できないものをいきなり出してくる。みんなに支持さ
 れる商品とは何か?ということをよく理解しているんでしょうね。完成度が高く、
 子供でも使いこなせる商品設計と驚きの機能。そしてiCloudというエコシステムです。
 iPhone5で撮影した画像が、いちいちダウンロード・ストレージしなくても家のパソコン
 で見れてしまう。家のパソコンで書いたスケジュールがiPhoneで見れてしまう。
 写真に関しては解像度が前回と同じですが、評価測光・高感度対応などiPhone4sから
 かなり進化させて画質が向上しています。
 
 
 
 ーこの後、池田氏のiPhone5に触れてみて、まず、その異様な軽さに驚き、ディスプレイの
 美しさに度肝を抜かれた。
 (お世辞ではなく、あまりの軽さで、これで本当に電話が出来るの??という感じだ)
 これだけでも凄いのだが、中のチップがA5からA6となり高速通信LTEにも対応している。
 これで何が違うか!iPhone5で撮影した800万画素の画像を加工してサクサク送信
 できるのだ。実際に送っていただいたが、あっという間の瞬間送信で、家の回線よりも
 速いのでは?と思うぐらいの速度だ。そして筆者がもっとも興味のある機能“パノラマ撮影”
 は池田氏に実演していただいたが、撮り方はまるでビデオ撮影のパンをするかのように
 撮影し、iPhone5内で短時間で内部処理する。
 そのサンプルがコレ↓
 
 画角が限られているレンズなので数枚の写真を繋いでいるのですが、継ぎ目が全く
 分かりません。これなら広角レンズは不要です。広角レンズのように歪みがないので
 かえっていいかもしれません。
 そこで頭をよぎったことは、これだけの進化を短期間で成し遂げていくスマートフォン
 に、単体カメラは対抗できるのだろうか???ということです。

 
 ーそして最後に来月12月に発売予定のCanon EOS-6Dについて質問してみた
 
【池田】ついにキヤノンがやったか!キヤノンらしさを感じました。無線でカメラから 
 パソコン・スマートフォンへ画像がとばせるというのはいいですよね。ただ、IT業界
 から見ると、やっと出たのか。という感じです。
 
 池田氏への質問はまだまだ多岐にわたり延々と続いた。もっと面白い質問を
 投げかけたが、あとはナイショ。そしてiPad miniについて詳しく知りたければ池田氏
 が書いた記事ビジネスジャーナル「3日間こってり使って判った、やはりiPad miniが一番!?」
 を読んでほしい。
 とにかく筆者が知りたかったのはIT業界から見た写真業界の今の姿だったんですが、
 結論としては 進化(行動)が遅い鈍い ということです。このままではメイド・イン・ジャパン
 の最後の牙城“カメラ”も危ないのではないかという危機感があるのです。
 現にiPad miniは手帳・本・カメラ・ゲーム・音楽プレーヤー・ラジオ・テレビ・ビデオ
 全てが合体してしかも小さく高機能!
 カメラ単体は後何年生きられるんでしょうか?
 


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