デジタル写真講座2022


 (1)カメラの行方2022

  2022年が幕開けて昨年のカメラ売り上げランキングが各所から発表されている。
 このカメラという写真優先撮影機器についてどうのこうの記事で大きく取り上げるのは
 日本国内だけであるが、その日本国内でも撮影機能しか持たないカメラは売り上げが
 激減し、デジタルカメラの世界シェアは現在もナンバーワンといっても明るい将来は
 なさそうである。一昨年から続くコロナウイルスの断続的悪影響で人の流れが制限される中
 では、写すしかできないカメラという商品はコンシューマーには売れない。さらに半導体
 不足問題も追い打ちをかけ、製造もままならない。わずかにミラーレス一眼カメラが
 一眼レフデジタルカメラに替わり台頭してはいるものの以前のようにミラーレス一眼カメラ
 がコンシューマーに売れることはまず考えられない。理由は簡単だ。
  1.大きくて未だに操作が難しく扱いにくい。
  2.データとなった写真のWi-Fi転送に時間と手間がかかりエラーが多い。
  3.撮影するのにある程度の技術習得が必要、それでいて手ブレがある。
 こんな面倒なものを使い続けるコンシューマーはいずれいなくなるであろう。
 それに比べてスマートフォンカメラ機能はカラーバランス・露出補正・手ブレ補正が完璧なほど
 出来ていて扱いやすい、いや、ただ押すだけだ。
 上記3つの不具合を即排除できれば今現在、少しは売れるんではなかろうか?
 これも希望的な観測だが、、、、、、、、、どうだろうか?
 そして昨年売れているミラーレス一眼カメラだが、有名各社(リコー以外)はそれなりの機種
 を販売したが、先行しているソニーに大きく溝をあけられている。そして問題というか未だに
 古い体質というか、35mmフルサイズのセンサーカメラを売ろうと資本集中し、顧客も踊らされて
 いる感が否めない。確かに、センサーサイズは大きければ大きいほどデータ量(画素数)も多く撮り込め
 ノイズも少なくできて美しい画像が得られる。しかし、現在の通信事情や携帯性・操作性から
 みると、いくら画質が良くても画像・動画を簡単に短時間で撮影・編集しアップロードできな
 ければ、魅力が無い。きれいな写真が撮れるだけで喜ばれる時代ではないのにカメラメーカー
 は、それだけにこだわっているようだ。
 しかも高価である。果たしていつまで続けられるだろうか?
 ならば小型軽量のマイクロフォーサーズシステムはどうか?
 昨年、ブログで少し触れたが、小型軽量で使い勝手が良くて安価で済む分、撮像素子(センサー)
 が小さいため、画素数と画質で35mmフルサイズセンサーカメラには敵わない。しかし動画記録となると
 4Kが主流の今は長時間記録が出来て、安価な高性能小型ズームシネマレンズを作れるマイクロフォーサーズ
 に分がある。だから動画をメインに使用するユーザーにはパナソニックのGシリーズは密かに人気が
 あるようだ。しかし、このシステムを売りにしている2社は35mmフルサイズセンサーカメラをメインに
 している他社に圧倒されて、うち1社のオリンパスは一昨年OMデジタルソリューションズ株式会社として
 再スタート。もう1社のパナソニックは35mmフルサイズセンサーカメラのSシリーズもラインナップしながら
 マイクロフォーサーズシステムのGシリーズも出し続けているが、やはり売り上げが伸びず、年末出す予定で
 あったGH6もいつになるかわからない状況である。Gシリーズに関しては動画に重きを置いてパソコンなしで
 YouTubeやFacebook等にライブ配信できる機能もあるが、タイムラグがありすぎて、ライブと言えるかどうか。
 次のGH6に関してはGH5マークⅡでの課題がクリアできなければ、存続危機に陥る可能性もある。
 2社とも明るい材料が少ないといえる。筆者はこのマイクロフォーサーズシステムがメイン機である。
 だから少々心配?
 とはなっていない。
 理由は、2社が存続できなくてもこの規格に合わせた周辺機器等を作る海外メーカーが多数存在するので
 海外に買われる可能性がある。特に動画用レンズは安価で性能のイイ中国製があるため、どこかが存続
 するであろうと思われる。日本製では考えられない値段で売られているので日本製は太刀打ちできない。
 
 上の写真は中一光学のマイクロフォーサーズ用シネマレンズだが、25mm(フルサイズ換算で50mm)で F1.0
 という明るさを実現している。動画専用レンズはレンズそのものの性能は写真用と同等だが、フルマニュアル
 操作をするため絞りリングとフォーカスリングが滑らかに動くよう作られている。ようはレンズ回りが頑丈で
 スムースに動作するようにできているため、レンズ外観が大きく重い。もちろん、通常の写真用オートフォー
 カスレンズでも動画撮影はできるが、映画のような出来を求めるユーザーにはこれが必要となる。今までなら
 日本製オンリーで値段も数十万円からとなるが、このレンズは6万円前後で買えるから、ユーチューバーには
 もってこいである。写真と動画を一台で済ませたい方にはお勧めである。フルサイズセンサー用レンズに比べて
 小さく、標準ズームレンズぐらいと言えばいいだろうか。
 肝心の性能だが、アナログ部分の技術に関しては日本製にやや及ばないだろうか?レンズ収差補正にやや課題が
 ありそうだが、値段と出来からして十分合格ではなかろうか。
 
 他にも動画専用カメラとその周辺システムを製造販売するブラックマジックデザインもこの規格を採用した
 商品をラインナップしている。
 これらのメーカーの現状からみてマイクロフォーサーズシステムは上記の2社が撤退しても残ると予想される。
 そして余談だが、プロフェッショナルフォトグラファーがほとんど見向きもしないマイクロフォーサーズカメラ
 を筆者が好んで使う理由だが、現在、紙への広告というのは年々激減している中、コロナ禍がさらに追い打ちをかけて
 紙の広告撮影というのはほとんどなくなった。写真も動画もウェブ上での仕事がほとんどの今、フルサイズ
 センサーのカメラというのは大きく扱い辛く、しかもウェブへの転送にも問題がある。粒状性よりパナソニック
   のGシリーズのようにローパスフィルターレスでYRGBカラーの厚みと切れがあるほうが、ウェブ上では見栄えが
 イイのです。ちなみに印刷へのCMYK変換には解像度が逆転した現在は、2000万画素あれば十分で、それよりも
 色深度のほうが重要となる。CanonやNikonは3原色であるため白の色表現がどうしても難がある。その点、Yチャンネル
 を持つパナソニックのGシリーズは白に強いというのが大きな理由だ。
 
 上記のことから、カメラ単体の商品は、通信との連携ができて携帯性よく、プロ用でも簡単撮影ができない限り
 どんどんと市場は縮小していくというのが、筆者の見方である。
 
 それから、カメラには重要な周辺機器がいくつか存在するが、三脚・ジンバル・ライト関係は、ほとんど
 海外製に席巻されているといっていいのが現在の状況である。特にストロボは技術でも使い勝手でも中国製
 の足元にもおよばない。
 これは筆者もショックだが、自身、メインのストロボとLEDライトは全て中国製となった。
   ストロボはGodoxの5種類を稼働させて、その新旧大小、形も出力も全く異なるものを一つもコントローラーで
 制御して撮影している。カメラ側からオンオフ、出力を瞬時に変えられてとても便利である。現在、このストロボなし
 では仕事の時間と手間がかなり異なる。
 
 さてさて、この状況で、日本製は生き残れるのだろうか?
 どのメーカーでもいいから、早く目を覚まさないと、手遅れになる。
 いや、もう手遅れだろうか、、、、、、、
   


 (2)GH6の実力は?

  昨年末発売される予定だったLumixGH6は今年の春発売されました。発売は数か月遅れましたが、
 技術的に困難なこと、コロナ禍でのパーツ確保や世界情勢を総合的に考慮すると、遅れる予想を
 していた方は多かったのではと。
  さて、遅ればせながらも無事に発売されたGH6の実力ですが、マイクロフォーサーズという
 小さめのセンサーでありながら、動画撮影にかなり重点を置いたつくりであることをユーザーは
 発売前から過度の期待を寄せていたようですが、予想を超えた出来といえるのではないでしょうか。
 ウェブをメインに撮影する筆者にとっては、従来機の不満をかなり払拭した商品であると。
 
 もちろん欠点もありますが、まずは今回変わってくれて重宝していることについてほかであまり
 触れられていない事をここでは簡単に記しておきましょう。
 ※マニアックな動画の技術解説を期待される方にはPRONEWSがおすすめです。
 
 
 
 今回、5から6へとステップアップし、5とは全く違うカメラになっていると言っても
 過言ではない製品となっています。センサーはマイクロフォーサーズといってもピクセル数
 を約20%以上アップして高画素化し、感度100からの設定を可能にしてくれた分、動画撮影
 にはアドバンテージがあります。動画記録モードはさらに増え、ProRes422HQ/ProRes422が
 あることで、かなりのプロ仕様動画カメラといえそうで、動画からの画像抜出は、少々デタラメ
 なライティングを施しても静止画として十二分に使用可能かとテスト撮影で手ごたえを感じました。
 
 
 
 
 
 上の二つの画像はProRes422で記録した1つの動画です。オートフォーカスで寄っています
 がピンはターゲットを正確にとらえていることが確認できました。カラーとサイズも申し分
 ありませんが、更に上の5.7K 422HQで記録すればA4以上の印刷も難なくクリアできるでしょう。
 抜出画像の最終調整はPhotoshopのCameraRawフィルターを使用しています。
 上のような画像であれば、別カメラでの写真同時撮影は、もう不要のようです。
 この新Live MOSセンサーと新ヴィーナスエンジンが前述の従来機の不満をかなり払拭したこと
 に繋がるのですが、ダイナミックレンジブーストで13+ストップという高ダイナミックレンジを
 実現し、なんて記述すると何のことかわからない方も多いので、平たくわかりやすく言えば、
 日の出や日の入りの露出差のある被写体でもそこそこよく撮れるということでしょうか。
 ただしこれは動画での話です。写真に関しては現在、ハイアマチュア以上であればRawデータ
 記録が当たり前なので気にする必要はありません。高品質の動画を撮りたい時にあれば
 便利な機能と思っていただければよろしいでしょうか。場合によっては写真の抜出をしても
 十二分に使える連続写真撮影と理解するのが適切かもしれません。
 下の写真はRaw画像撮影し、Photoshop2022で解凍したものです。夕暮れ時の18時半にISO1000
 で撮影していますが、今回の新センサーとエンジンで従来機と比較して格段にノイズが減少して
 いることが確認できました。特に青空の部分を拡大した際のカラーノイズは、かなり改善されて
 いて、200%表示使用のおすすめも躊躇いはなくなりました。
 
 
 
 下のユリの写真はストロボを使用せずレースカーテンを通して入ってくる柔らかめの完全逆光だけで
 撮影し白の中の白い被写体をどれだけ描写できるのかというテストです。ISO200という低感度でも
 ありますが、従来のマイクロフォーサーズカメラと比べて再現性は良好といえます。
 
 
 
 さらに厳しい条件下(ストロボなし・ISO2000で撮影した夕暮れ18時の木陰で暗部のスパイダー
 も、輪郭・色再現は従来機に比べて格段に向上。
 
 
 
 と、従来機にはない機能と35ミリフルサイズセンサー搭載のLumixSシリーズと比べても
 さらに早い処理能力を備えた最新エンジンが写真と動画両方の高解像度・色深度再現を
 高めていることは確認できました。
 ただしこれらはLumixの中だけでのお話。
 上記は良いことずくめですが、マイナス面を最後に。
 まず、向上したとはいえ、センサーサイズが小さいため他社の35ミリフルサイズセンサー搭載
 の上位機種と比べてダイナミックレンジがやや狭い(プロの目からするとかなり)のが気になるところ。
 そして極端に増えたデータ量を瞬時に書き込むために動画・写真共に従来のSDカードではカバー
 しきれなくなり、CFexpressカードを採用、それでも書き込めないApple ProRes RAWは外部デバイスへと
 アウトし書き込むこととなる。映画やドラマを撮影するならいいが、一般の撮影には向かない。
 大きく・重くなり過ぎて、おすすめはできない。このカメラの良さはマイク以外は何もつけず
 (三脚も使わず)手持ちで動画・写真をそこそこ撮れることなのである。近い将来、三脚はおろか
 ジンバルなども必要としない時代が来るかもしれない。その時は従来のカメラの形を捨てて
 キューブやボールタイプになるのかも。
 
 とにかく同クラスの他社製品に比べて多彩な機能とプロが求める周辺機器を備えてしかも
 安価なので、プロアマ問わず十分おすすめできるカメラといえる。
 


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