デジタル写真講座2011


 (1)2011年デジカメは?

  2010年12月4日号『週刊東洋経済』で、この手のビジネス書では珍しくカメラに
 ついての記事が48ページにもわたって特集されていました。内容は、筆者のこの
 デジタル写真講座とだぶるものがいくつかあり、興味深く読ませてもらいました。
 とにかく日本メーカーが長きにわたり唯一世界を席巻し続けている“モノ”、カメ
 ラなのですが、そのカメラの現在状況と取り巻く環境、そして将来の展望について
 かなり詳しく取材されており、正直びっくりしました。そもそもこのような記事は
 専門誌でやっていただきたいのですが、いままで全くなく、これからもないような
 ので、筆者自身このページで書き続けてきました。
  まず、なぜこの分野で他国の企業が容易に参入できないかは、一眼レフカメラの
 ように、とてもデリケートで職人技的アナログ技術を要するモノの場合、そう簡単
 に「明日から当社もやってみよう!」というわけにはいかないことは誰でもわか
 ることでしょう。しかし、デジタル化が進んだ今、ミラーやプリズムといった究極
 のアナログ技術の塊を取り除いたミラーレス一眼カメラのようなカメラが主流にな
 ると様相が一変します。こちらは高性能レンズだけがあれば中国や韓国の家電・
 デバイスメーカーでも出来てしまうのです。ミラーレス一眼のようなカメラに
 今後必要なものは見やすく精度の高い背面液晶モニタと通信、そしてカメラ内部
 で完結するソフトウェアです。早い話が、現在急成長中のスマートフォンと高性能
 カメラが合体することです。現在でもスマートフォンにはかなり精度の高いカメラ
 機能は付いていますが、カメラとして使うにはまだまだ制限があります。この制限
 がなくなり、完成度の高いカメラとなり、背面パネルで文字が打てて(これも音声認識、
 になればさらに◎)瞬時に送信ができれば、ややこしいカメラは業務用のみしか
 生き残れないかもしれません。昨年から激化した各社のスマートフォン競争は
 今年さらに激しさを増していくことでしょうから、今年か来年にはそのような
 凄い商品が出てくるかもしれません。では、どのようなカメラが業務用以外で
 カメラ単体として生き残れるのか?
 オリンパスが出しているレンズ交換式のOLYMPUS PEN Lite E-PL1s や液晶画面タッチ
 でシャッターがきれるPanasonicGF2、今年春に発売予定のFinePix X100のような
 チョイとラグジョアリー感のある写りを重視した高級カメラでしょうか。
 そこで私の提案はレンズをズーム式ではなく、明るく解像度の良い単焦点レンズを
 交換するタイプを推奨いたします。ただし、いちいち着脱するのではなく円盤に固定
 した広角・標準・望遠レンズ3本を回転式交換というのはいかがでしょうか?
 こうすればレンズを別に持つ必要もないし、ホコリからも少しは防御できて一石二鳥。
 さらにレンズをインナーフォーカスにしてしまえば強度も上がるのでは?
 仕上がりも一眼レフ並み!ただしどれぐらいの値段で売るのが適切でしょうか?
 13~15万円ぐらいですかね。となるとシグマあたりが作れるんじゃないでしょうか。
 じゃあ次に本物?の一眼レフについての将来はどうでしょうか?
 高画質で速写するというなら一眼レフは、まだまだ優位で静止画像がそう簡単にな
 くなりはしないため(※理由は次の2で)、まだまだ生き残れるのではないでしょうか。
 コンパクトデジカメも上記以外の生き残り策はあるかと思いますね。例えば電話とま
 ではいかなくても、WiFi以外の通信方法で画像を自由に目的物に転送し、すぐに
 フォトフレームで見れるとか。
 考え出すときりがないのですが、やりようによっては生き残り策はいくつかある
 ような気がします。ただし、今の日本のシグマ以外のメーカーには、作る技術はあっ
 てもそういった発想を具現化するところには行き着かない可能性が大ですね。
 このままでは日本のカメラの優位性も2,3年後ぐらいは危ないかもしれませんね。
 
 
 


 (2)デジタル時代の写真の撮り方・残し方・ 見せ方、そして写真を撮ることの意義

 今回も(1)の続きですが、『週刊東洋経済』の特集の中では、写真の上手な撮り方と写真
 に情熱をかける人たちのコメントが掲載されていたのですが、プロの写真家ではなく、
 ハイアマチュアへのインタビューがあり、これが素晴らしい。実は、筆者は以前から
 写真家にインタビューするという方法は、とても安易で面白い話が少なく、素人が納得し、
 すぐ役立つ情報が提供できていないように感じていました。中でも気になったのは筆者自
 身も記憶に残っている明治生命フォトコンテストの写真を撮影した方のコメントでした。
 彼女曰く、「ビデオは時間の記録、写真は撮り手の想いが写る」とのこと。
 これは私も同じようなことをいろんな業界のお客様に説明しています。例えば、結婚式の
 写真を見せてほしいという友人や親せきはいるのですが、ビデオを見せて下さいと言う
 人は、なぜ少ないのか?「それはビデオが時間を記録しているため、10分なのか、30分な
 のか、それ以上なのかわかりませんが、見るためには自分の時間を奪われることに自然と
 拒絶反応が生まれるからですよ」と説明しています。実際撮影された方も繰り返し映像
 を永年にわたって見るかというとどうでしょうか?それとは逆に写真はどういうわけか
 人は見たがります。そこで筆者は、写真に関しては、「その瞬間、見たモノも見てない
 モノも全て一枚に集約して、一瞬で自然に見せられるのが写真です」と説明しています。
 上記の写真についてですが、あの一枚の写真は、我が子の残り少ない人生のために、
 お母さんが、ご子息の全てを記録に残したいという思いからカメラを肌身離さず行動し
 ていたのでしょう。賞をとった作品は、ほんの一瞬の出来事だったのではと想像できます。
 筆者自身は、これを“究極の記録”とよんでいます。多くのシーンを狙って撮るモチベー
 ションの高さには頭が下がります。じゃあ、みんな撮りたいものを狙って粘り強く撮リ続
 ければ、必ずや誰もが良い写真を撮れる!だれもが納得する良い写真が撮れるはず!!
 と言いたいのですが、そうも言えないのが写真の世界です。絵画と違って押せば絵が写って
 しまう写真は技術や感性だけでは片付けられないものがあります。写真の良さでもあり怖さ
 でもあることなんですが、写真は「撮った」というより「撮れてしまった」というほうが
 正しいのではないかと思うことが多々あります。例えば、下の写真の中に家族3人仲良く
 歩く姿を捉えたモノクロ写真がありますが、いろんな方から良い評価をいただきました。
 しかし、この写真は道端で他の人たちをずっと撮影していた私が、ほんの一瞬、よそ見して
 たったの1枚撮っただけのもので、単なるまぐれ当たりにしか過ぎないのです。
 それでも「カメラマンが撮るのと素人が撮るのでは違いますよ」と人からはよく言われます。
 スナップ撮影する基礎を数カ月かけて習得し、始終カメラを持ち歩きひたすら撮ることで、
 誰もがその場であのような写真を(もっと良く)撮れるのではと真剣に思っています。
 だからデジタル時代の『撮り方』として、フィルム代がないのですから、後悔しないよう
 にいろんなアングルでガンガン撮ること!ひたすら撮ることをオススメします。もちろん
 ホワイトバランスやピント、手ぶれ防止、適正露出などの簡単な基礎あってのことですが、、、
 そして、できる事ならばマニュアルモードの使用をオススメします。昔のカメラや今もある
 中判・大判カメラにはオートモードというのはほとんど存在せず、カメラマンであれば
 マニュアルモードで撮影するのが当り前で、かえってオートモードの方が使いづらいのです。
 しかしプロだけでなく、このモードはもう少し良く撮りたいというアマチュアの方にも
 有効なのです。理由はフィルムの時代は撮ったものを撮影直後に確認することができませ
 んでしたが、デジタル撮影はすぐ確認できます。しかも失敗しても消去してしまえばいいこと
 で、どんどんシャッターを押してデータの確認をしながら練習することです。撮り続けていけ
 ば、自ずとカメラの設定に不満が出てくるのです。それを解消するにはマニュアルモードに
 行き着くしかないのです。いろんな場所・時間・条件で撮影し、失敗を重ね次回撮影に
 いかしていけば、それなりに満足のいく写真が撮れることでしょう。
 そうしたデータを撮っていくためにもシャッタースピード&絞りは、撮り手が決定したほ
 うが「あのとき同じような条件で何秒で撮ったかな?」と考えるものです。オートであれ
 ば、そんなことはいつまでたってもたっても考えることなく、進歩も少ないことでしょう。
 そして、動画にはないこのシャッタースピードというものを使いこなせることができれば
 あなたもプロ20%ぐらい?でしょうか。
 例えば下の写真で流れ落ちる滝の瞬間を捉えた2枚があるのですが、左はややスロー
 シャッターで撮影しているため水は直線に写りますが、右は高速シャッターを使ってい
 るため水の落ちる荒々しさが写っています。同じ場所で同じ時間帯に撮影しているのに
 見る人に対し違う印象を与えます。これはどちらがいいのか?答えはありません。
 撮る人の感性です。その下の波紋の写真もです。撮りこむ時間の違いで同じ風景が、
 全く違うものに感じられてしまうのです。写真は「記録」といいましたが、どのスピード
 で記録するかを正しく選択しないと事実と違うものになりかねません。もうひとつ大事
 な絞りについてですが、下の落葉の写真の真ん中のやや下以外はピントがきていません。
 肉眼ではこのように見えませんが、明るいレンズで絞りを開放近くにすれば、このように
 写り、何か特別なものが写っているわけでもないのに、見る人に何かを考えさせるような
 一枚になってしまいます。“記録”といってもこの絞りとシャッタースピード選択が
 カギを握っているので、これをマスターすることがデジタル時代も大切なことと考えます。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 そして、デジタル時代の写真の残し方と楽しみ方についてですが、フィルムのような目で
 見える実体がなくなった今、多種デジタルメディアのみで残していくことは危険な行為かも
 しれません。PCやテレビなどモニターがないと写真の確認が取れない・見る事が出来ない。
 データ&メディアが壊れたり、データが消えていたりといったデジタル特有のトラブルが
 挙げられ、返ってフィルムより不安に感じる事があります。。筆者自身がデジタル化
   をして10年が経過して体験体感したことで、デジタルデータのみでの保管は無理なのでは?
 と考えるようになりました。例えば、家庭用のデジタルフォトフレームをあちこちで、
 よく見かけるようになったのですが、電気がなければ見る事が出来ないし、データが
 いつ壊れるかわかりません。元々止まっている画像をわざわざ液晶画面で電気を使って見る
 必要があるのかな?という疑問がわいてきました。コピーが簡単に取れて、どんな遠い所へ
 でもデータを送れて、世界中の人に写真を見てもらえるということは素晴らしいことです
 が、保存して簡単に楽しむ最終形としては、電気を使わずどこへでも入れられる紙にする
 ことが最適ではないかと思います。筆者自身は、財布やカード入れ、携帯ストラップで
 写真を持ち歩き、自宅には下の写真にあるように額装、写真立てに気に入った写真を入れ
 て飾っています。こうすることで、いつでも自然に写真が見れて気が和むものです。
 作品に関してもチョイスして印刷製本をしたりして、とにかく紙に残す作業を心がけ
 ています。ネットで本を発注するという作業は、デジタル化が進みデータを簡単確実&
 リーズナブルに送れるようになったデジタル時代の最たる恩恵です。
 一冊作って本棚に保管する。これが最も確実な保管方法なのかもしれません。
 古い資産であるフィルムについても同様にマウントや専用ファイリング等を使用して
 本棚に整理し、その都度、必要に応じてデータ化することが望ましいでしょう。
 今は自宅にいて、手持ちプリンタやインターネット注文でのプリントが自由自在に
 できるのですから、大切なデータを整理して印刷したものを保管してみてはいかが
 でしょうか。
 
 
 
 
 
 
 
 最後に写真を撮ることの意義についてですが、前述のモノクロ写真を撮ってから、
 おかげでいろんな恩恵を受けました。しかし、まぐれ当たりの写真を褒められれば
 褒められるほど心は痛みました。なぜなら勝手に撮って、被写体になった方たちに
 何も知らせず、それをもとに稼いでいることに後ろめたさを感じずにはいられません。
 そこで考えたことは、「写真中の彼らに会って御礼が言えないだろうか?」というこ
 とでした。その翌年は別の場所へ行く予定でしたが、急遽変更!
 前年通った場所をなぞるかのように訪ね歩き、撮った方々を探し、出来る限り1人1人
 に写真を手渡しました。郵送で送った方は受け取ったかどうかを自分の目で確認もし
 ました。手渡した方からは、いろんなもてなしを受け、郵送で送っておいた方のほと
 んどは居間などに額装し飾り、別の家族も撮ってほしいなどの要望を受けました。
 遠隔地へ再訪問したことで、多くの方に喜んでいただき、自分自身も心のモヤモヤが
 とれました。このとき初めて分かったことは、一番喜ぶのは撮られた方なんだという
 ことです。仕事でなんでもかんでも撮っていると、こんな簡単なことになかなか気付
 かないのです。これ以降、ただただ自己満足のために撮るべきではないと思うように
 なり、被写体になられた方の想い等を聞き、こちらからは『残す』ことの大切さを
 伝えるようになりました。この『残す』ということが写真の意義なのではないかと思い
 ます。撮影する側される側双方が予期することしないこと全てを一枚に凝縮してしま
 い、二度とないその瞬間を永久に残すこと!!
 ではないでしょうか?
 デジタルカメラで誰もが簡単に撮れるのですから、この残す作業をシンプルに行え
 ばどうでしょうか。例えば、下の2枚の写真は息子と二人で写っているだけのもので
 すが、衰えていく自分と成長していく息子の対比が一目でわかります。残った
 記録(写真)を後々息子が見て自分の成長を確認し、更に次の世代に残していく
 ことが大切なような気がします。撮った人の為ではなく、撮られた人とその周りの
 人の大切な記録として残すことではないでしょうか。
 
 


 (3)コンパクト望遠ズームレンズは使えるか?

  2010年末にキヤノンより、新しいコンパクト望遠ズームレンズEF70-300mm F4-5.6L IS USMが
 発売されました。以前であればこのクラスのレンズは写真ビギナーが買うものだったので、
 それほど精度のいいものが売られるということはありませんでした。が、デジタル全盛時代と
 なった今は、高感度でも劣化の少ない画質が保証され、プロやハイアマチュアの間でもF値が
 暗くても、画質が良く携帯性に優れたレンズを求める傾向にあり、その要求に応えた結果でしょう。
 先ずは大きさからですが、手ぶれを補正するためにスタビライザーを内蔵し、耐久性も従来製品
 よりアップしているため1,050gと大きさの割には重いという印象です。下の写真左のシグマ
 レンズ70-300F4-5.6は545gなので、ほぼ2倍の重量です。それでもこの長さの望遠域をカバー
 するレンズとしてはコンパクトなほうでしょうか。
 
 
 
 そして肝心の写りについてですが、単体レンズに匹敵する描写力と完全ともいえる手ぶれ補正
 を実現しています。特に下写真の木製ロゴアップは焦点距離300ミリ1/30秒で撮影しています
 が、全くといっていいほどブレてません。木の劣化具合も完全に描写できています。旧タイプ
 のレンズでは不可能な撮影でした。
 
 
 
 描写力は顔のアップと鳩の写真を見てわかる通り、肌の質感や鳩の毛並みも表現できています。
 驚きです。
 
 
 
 
 では暗い望遠レンズで撮影が困難とされる動く被写体撮影に関してはどうか?なんですが、
 スタビライザーモード1(通常手ぶれ補正用)と2(流し撮り用)の選択ができて、どちらもよく
 効いていることが下の写真でわかります。これも上記の例同様、今までのレンズではできない
 撮影でした。ただし、撮影に熱が入りモード切り替えを忘れないこと。
 
   
 
 
 
 
 
 作例でもおわかりの通り、EF70-300mm F4-5.6 IS USMを知る人なら買い替えたくなるぐらいの
 出来であることは一目瞭然です。更にレンズ表面のフッ素コーティングで指紋など油汚れのふ
 き取りが楽になり、この手のレンズにありがちな前玉が勝手に伸びてくるのを止めるロックボ
 タンが付くなど細かい配慮もあり、大荷物を持って行けないが望遠レンズを使いたいなどの仕
 事でも十二分に使える使いやすいコンパクト望遠ズームレンズといえるのではないでしょうか。
 今までのオマケレンズ(失礼!)とは一味も二味も違うレンズなので、買って損のないレンズ
 ですね。正直、もっと早く、5D-M2や7Dと同時に発売してほしかったレンズです。
 
 
 
 
 
 
 
 
 


 (4)2011年コンデジの実力

  携帯電話に付属しているカメラ機能が日進月歩で大変貌して、その必要性が問わ
 れているコンパクトデジタルカメラ(以後コンデジ)。2011年3月現在、現行機種である
 Canon Power Shot S95を使ってその実力のほどを検証してみました。
 
 職業写真家を長年営んでいるとカメラに関する質問はよく受けるのですが、デジタル
 化されてからはカメラそのものとパソコン・周辺機器・ソフトウェアについても質問さ
 れることが増えました。そしてフィルムカメラの頃との徹底的な違いがもう一つ。
 それはカメラそのものも進化が目まぐるしく3年も経てば店頭に置かれるカメラは
 ガラリと変わってしまうこと。特にコンデジは半年で主役が交代するぐらいの勢い
 です。3年前に一度、画像サイズについてこの講座で書いたときのコンデジとは、
 遥かに違う性能と画質を備えています。今回はどれぐらいの画質なのかを、誰もが
 撮りたい被写体で試してみました。ただしプロが撮る方法で、コンデジのパフォーマ
 ンスの限界を調べ、“仕事で使えるか否か?”
 
 ①【料理メニュー撮影】   大型ストロボで2灯ライティング
  ISO-80 F8 RAWモード
  カメラはマニュアルモードでストロボをシンクロ発光させるため内蔵ストロボを最小発光
  
  
  
 色彩豊かな握り寿司、シズル感のある鯛かぶと煮、マグロと半熟玉子の丼を本格ライ
 ティングすれば印刷に耐えうる上がりになり、撮った筆者もビックリ!ダイナミック
 レンジがやや狭いのですが、従来のコンデジとは比べ物にになりません。この小さな
 カメラでこれだけだけ撮れれば十分です。充分すぎます。画像サイズだって1000万画
 素以上あるわけですから、A4印刷にも耐えられますね。
 
 ②【簡単に料理を撮影する】
  汎用クリップオンストロボを使用し、光を天井バウンスさせ撮影(白の天井であること)
  カメラはマニュアルモードでストロボをシンクロ発光させるため内蔵ストロボを最小発光
  RAWモード
  
  この手のカメラにはクリップオンストロボを取り付けるアクセサリーシューがない
  のでブラケットを使用。ただし、アクセサリーシューを装備していてもコンデジは
  その大きさと重量から考えてバランスが悪いのでブラケット使用が最適です。
  これも仕上がりはなかなかのもので、簡単キレイで素早く撮影できるから、料理撮影
  が大好きなアマチュアの方にオススメ。もちろんストロボはマニュアルモードです。
  光の角度と光量を調節しながら何度でも撮ればいいのです。
  
  
  
 
 ③【マクロ撮影】
  一眼レフカメラは望遠系のマクロレンズに付け替えれば簡単に撮影可能ですが、
  固定式レンズのS95は広角系でしかマクロ撮影ができないので、ちょっとした
  裏技を使います。先ずはレンズを最大望遠にして、一眼レフレンズの前に装着
  するクローズアップレンズを写真↓のようにかざします。
  
  
  
  以前に小さなフィギアを撮影する方法の一つとして紹介したのですが、この方法が
  もっとも手軽です。ただし、レンズを左手でもち右手でシャッターを切らなければ
  ならないため三脚が必要となります。そして下のコインを撮影し、一眼レフと比較。
  
  
  
    ④【RAW現像について】
  コンデジを使うほとんどの方は記録形式をJPGに設定しますが、カメラ内部の画像生成
  は、かなり画質を傷めるためオススメできません。RAW形式があるのだから、使わない
  手はありません。S95にはパソコンで現像するためのソフトDPPも添付されているので、
  任意の色やトーンで画像を仕上げるというのもなかなか楽しいものです。
 
 
 
  もちろん汎用ソフトに慣れている方は、Adobeのフォトショップ・エレメンツやライト
  ルームといった選択もあるでしょう。他社の一眼レフや他社コンデジで撮影したものを
  同じソフトで現像したい方には、こちらがオススメです。
 
 
 
 ご覧のとおりの高性能で、文句のつけようもありません。安いコンデジですからね。
 「コンデジもココまできたか」というのがこのテストの印象です。
 モノによっては仕事でも充分使えますね。
 


 (5)コンデジで広角撮影するには?

  コンデジを使っていて困ることのひとつとして、超広角で広範囲を撮影できないという
 ことが挙げられるのですが、パソコンと高性能画像処理ソフトが充実し安価になった今は、
 一度で撮影するより分けて撮影をして後で繋ぐほうが簡単確実です。例えば、下のパノラマ
 写真はデジタル一眼レフカメラの標準ズームで、5分割(しかも手持ちで)撮影し
 フォトショップにある機能Photomergeを使用し自動処理しただけのものです。
 
 

   ↑手持ち、広角側24mmで撮影した画像を自動処理

 
 
 コンデジもこの方法を使えば広角撮影が可能です。
 でも、遊びは良いにせよ、仕事では使わない方がいいのでは?という意見もよく聞きます。
 これに筆者は反対で、元々レンズというのは完璧ではなく、特に広角レンズは無理をして
 いるので、周辺域の湾曲・色収差がかなり出るため、分割撮影可能なシチュエーションでは
 一発撮りをせず、進んで分割撮影します。
 使えばその良さと便利さがわかりますよ~
 
 


 (6)モニタのお話

  画像の確認に使う最も重要なモノといえば、言わずと知れた“モニタ”。
 なんですけど、未だにこのモニタに売る側も買う側も振り回されている感が強いように
 思います。大きな理由は画像出力表示するために、厳格な基準とそれに沿った規格策定・
 認定する絶対機関がないことでしょうかね。全く基準がないというわけではないのですが、
 絶対基準があるわけではないため、買う側も何を信じて勉強し、買う前に必要な予備知
 識をどう得ればいいのかわからないのが現状でしょうか。そういう絶対基準・規格があっ
 たほうが売る方も楽だとは思うんですけどね。そんな中でもクリエーターやハイアマチュ
 アは、正確な色?を求めて四苦八苦しています。今年2月に開催されたCP+でもモニタと
 それを調整するための周辺機器メーカー&販売店は出展していましたが、まだまだ認知さ
 れているようでされていない分野で、高くて扱い辛いものという雰囲気を与えているよう
 ですね。売る側もどの程度のモノを作り売ればいいのか苦しんでいるようです。
 と、マイナスなことばかり言ってもしかたないので、今お手持ちのモニタで出来る事を
 二つばかりお伝えいたします。
 ウィンドウズに限りますが、Vista以降のカラーマネジメントシステムとしてWindows Color
 System(WCS)が導入され、これをサポートするアプリケーションでsRGB以外のプロファイルを
 モニタ上で正確に表示できるようになりました。マイクロソフトオフィスなど使えるソフト
 ウェアも限られますが、フォトショップのような業務用ソフトを使わなくても埋め込まれた
 プロファイルを簡単正確に色再現できるようになりました。なのでコントロールパネルで色の
 管理を開きデバイスとプロファイルの設定することをおすすめいたします。
 
 
 
 
 次に、どのモニタもカラーバランスが合っているかどうかを多くの方が知らずに作業してい
 るようなので、カラーのバランス調整をされることをお勧めいたします。バランスが合って
 いないのに青っぽい、赤っぽいというのはいかがなものかと思います。それから紙に出力を
 される方には輝度調整(cd/m^2)も重要です。この輝度をどの数値に持っていくかが実は大き
 く鍵を握っています。下の写真は Spyder3 を使ってモニタキャリブレーション中の一コマ
 ですが、ケルビンとガンマを最小限に抑え、輝度を75~80cd/m^2にしようとしています。
 メーカー側からすると下げすぎでは?と言われますけど、輝度は作業環境でかなり異なるた
 め、メーカーのいうことはあまりあてになりません。あくまで参考です。筆者の場合は、
 やや暗めの作業環境光下で、紙への出力を最優先した設定となっています。全暗黒にする
 というのも一つの手ですが、目のこと・作業中の危険を考えると、ある一定の環境光を入れ
 るほうが現実的なのではないでしょうか。
 
 
 
 そして、最後にオマケを一つ。
 その環境光がモニタに反射しないようフードも必須アイテムです。これは純正を
 買おうとするとどういうわけかお高いので、OEMや自作で十分です。写真はイメージビジョン
 の製品で、どのモニタにも取り付けられて、キャリブレータを取り付けるための穴もある
 超便利な一品です。
 
 
 
 
 モニタについては橋渡しするグラフィックカードのことやメーカーによるチューニングなど
 まだまだ奥が深いのですが、解り辛いうんちくをだらだら述べても余計解らなくなるので
 今回はこのぐらいで。
 
 


 (7)モニタのお話Ⅱ(3D映像画像&モニタの将来)

  前回更新から3カ月が経過してしまい、書かなければいけなかったことも古くなり
 載せられなくなった案件が出てきました。それがデジタルのスピードなのでしょうか。
 先ずは今もあちこちでよく聞く劇場映画やテレビ、モニタの3Dについてですが、今現在、
 見せられている3Dとよばれる映像は、正確には3Dではなく、“3Dふう”の映像です。
 理由は2つの2D映像を同時に出力しメガネをかけて両眼の視差利用しただけのものだからです。
 2つの2D映像は、同じカメラ2台を並べて撮影し、左目で見る映像と右目で見る映像をメガネ
 で左目用の画像と右目用の画像に分けて見せて、あたかも一つの映像のように脳を騙してい
 るとでもいえば理解できるでしょうか?なので片目では3Dに見えません。片目では一つの2D
 映像がクリアに見えるだけ。この人間独特の左右の見え方の違い(視差)を利用したのが、現在
 の3D映像なのです。裸眼で3Dに見えるという任天堂3DSも発想は全く同じで、画面上にメガネ
 をかけているようなものと思ってもらえばいいでしょうか。この強制的に2Dを3Dふうに見せら
 れることで、疲れや酔いを感じる方も多く、長時間見ることをを勧められません。
 例えば、下の画像↓をご覧ください。約50㎝離して左目を手で覆い、右目で左のイラスト
 をじっと見ると画像全体が見えているにもかかわらず、右のイラストが見えなくなります。
 
 所謂 死角です。全体が見えているはずなのに実は見えていない。
 全く同じ場所から同一の物を見ても左右の眼には視差があります。
 この視差を利用しただけの3Dふうモニタやテレビは人によって3Dに見えないケースがあり
 ます。今夏に公開された「トランスフォーマー3」3D劇場版を息子に何の知識も与えず、
 1人で鑑賞してもらい後から感想を聞いたら、「3Dに見える場面もあったが、あまり3Dに
 見えなかった。目が疲れた。これって3Dにする必要があるの?」というこたえがかえって
 きました。私も同感で、見ようと意識すると3Dは良くないようで、ぼんやりと眺めるのが
 良いようです。しかし、“心を無にして見る”なんてことは簡単なようで難しいですね。
 意識せずぼんやり眺めるということができない方たち(私もです)が多いのではないでしょうか。
 メガネで視覚を無理矢理矯正されることに対し、自然と拒絶反応が出るのか、無意識に目が
 別の方向を見ようとするのでしょうか?やはり、近未来映画などで出てくるような本当の立体
 映像(空中に投影)にしない限りは、3Dを実感することは出来ないのではと思っております。
 実際は違いましたが、言葉だけ借りれば『アバター』のジェームス・キャメロン監督が言う
 ように“見るのではなく、そこのいるのだ”という映像にしないとね。
 だから、現在ある陳腐で古い3D技術を使って、値崩れを起こし売れないテレビやパソコン用
 モニタに高級感を持たせ、なんとか売ろうというのは無理があるのです。もはやテレビ&モニタ
 にお金を使う時代ではないのです。今年初めにモニターメーカーのナナオの方からも「3Dはどう
 でしょうか?」と尋ねられましたが、コンテンツも少なく、3Dで見る必要のないものを無理矢理
 3D化しても、見る側は疲れるばかりで無駄であることをお伝えしました。多くの方は、それよりも
 安価でそこそこのモニタを求めているのです。そんなものに時間と資金を投入するぐらいなら、
 もっと別のモニタを作ってみては?と提案もさせていただきました。
 
 一つは、高性能大型モニタばかりを作るのではなく携帯できる高性能で耐久力のあるモニタ
 を作ってみては? という案です。現実的には営業会議にかけると、そのような案は簡単に
 廃案、既定路線のスタンダードモニタになってしまうようです。値段で海外メーカーに大きく
 溝をあけられているというのにです。もっと違う方向に進まない限り、このまま進むと日本の
 メーカーは、液晶モニタ&テレビ部門では一社も残れないのではと危惧しております。
 
 そしてもう一つの案は、小型化したモニタをカメラから直結してカメラ側に画像調整機能と
 本格通信機能をつけてコンピューターを中間から外すというカメラと連動する案。これは
 前々から唱えている携帯(スマートフォン)付きカメラです。このことに気付いている方は
 他にもいらっしゃるようで、9月8日のgooニュースでコンパクトカメラの生き残る道について
 述べられています。
 モニタの生き残りも同様のように思います。なので日本のメーカーがモニタの将来を真剣に
 考えるのであれば、以下のような案はいかがでしょうか。
  ①カメラ直結専用で、キャリブレーションはモニタ本体で行う。
  ②カメラから直の通信やカメラ内部で画像処理し、そのサポート的な役割をするモニタ
  ③モニタ本体の携帯性と耐久性
 などカメラと直接つなぎ、カメラに特化したモニタを出すというのはいかがでしょうか。
 そうすればデータを移し替える際の危険も少ないし、作業も早くなるから写真家の方々には
 売れるんじゃないでしょうか。
 ただしお値段は安くですよ~~


 (8)モニタのお話(Ⅱの緊急追加)

  一昨日このデジタル写真講座を更新したばかりですが、本日25日のgooニュースで
 液晶“日の丸連合”が出ていたので、これについて一言。現在の液晶モニタについて
 の日本の立ち位置がかなり不利であることは、このページでも書いた通りで、日本の
 メーカーもそれは重々承知のようですね。それで最後の牙城ともいうべく中小型パネル
 のシェアだけはなんとか確保したいゆえの連合ですが、「動きが遅すぎるのでは?」と
 いうのが私の感想です。スピードが求められるデジタル時代に日本メーカー各社と官の
 決断実行が遅すぎるんですよね。韓国・台湾メーカーにかなりの遅れをとっているのは
 ずいぶん以前からわかっていたことなんですが、なかなか実行できないのは日本の慣習
 なのでしょうか?官がかなり鈍いことは誰もが以前から承知していることですが、メーカー
 もあまり変わりはないようです。この連合体も成功するか否かは、ここ30年の家電の歴史
 を振り返れば期待薄ですね。近年のソニーブルーレイと東芝HD DVDの技術統合失敗は
 記憶に新しいと思いますが、古くはVHS対ベータビデオ戦争などなどきりがないんです。
 日本国内で激しい潰し合いを繰り広げてきた歴史があり、どれも統合に成功していない
 ので今回も“無理なんじゃない”って思うのが普通の感覚です。
 しかし今回ばかりは国外メーカーが相手なので、譲り合って是が非でも成功して頂きたい!!!
 なのでなので日本のメーカーさんに言いたいのは、3カ月単位で目まぐるしく変わるデジタル
 機器に供給するデバイスや携帯電話用なので、即決断・即実行してください。ということです。
 でないと、この国からモニタ事業がなくなってしまいます。
 

home